「マメ」がパリコレデビュー “請求書の緑色”まで身の回りの美しいものを探す旅

黒河内真衣子が手掛ける「マメ(MAME KUROGOUCHI)」が初のプレゼンテーションをパリ・ファッション・ウイーク期間中に開催した。東京都と繊維ファッション産学協議会が主催する「ファッション プライズ オブ トウキョウ(FASHION PRIZE OF TOKYO)」の第1回の受賞で支援を受け、満を持して2018-19年秋冬コレクションをインスタレーション形式で発表した。

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黒河内はこれまで8年間で作り上げてきた“マメらしさ”を追求するため、原点に立ち返り、アトリエの周りに咲く草花をスケッチして柄としたり、調理器具のザルをニットの編み目として採用するなど、日常の身の回りにある美しい色やモノを集めてウエアに反映した。キーカラーの緑色は、アトリエの周りの枯れ葉の色や、領収書のミントグリーンの色合いからヒントを得た。

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また、フランス人建築家のシャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand)が1940年代に日本で開いた展覧会「選択・伝統・創造」に触発された黒河内は、同展の資料に掲載されていた蓑(みの)や藁細工から影響を受けたタッセルやフリンジのディテールをモダンに加えた。日本製のオリジナル生地へのこだわりをそのままに、海外を意識したシルエットと、コレクションピースも増やした。異素材をミックスした装飾、マキシ丈や超ロングスリーブのオーバーサイズ感が新鮮だ。

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アクセサリーも充実している。シューズは三越伊勢丹のシューズブランド「ナンバートゥエンティワン(NUMBER TWENTY-ONE)」とのコラボで、草花の刺しゅうを入れたショートブーツや、サイハイブーツなどを披露した。ブランドの人気定番であるPVCバッグは、クリアなガラス細工のようなウエストポーチやバンブーハンドルのハンドバッグが仲間入りした。

会場にはモナ・ビスマルク アメリカンセンター(Mona Bismarck American Center)を選んだ。ギャラリーの3部屋を使い、1部屋はアラーキーこと荒木経惟と女性の官能美にフォーカスした写真と小浪次郎による記憶をテーマにした作品を展示。残る2部屋では、日本の屏風や障子をイメージした赤い仕切りを部屋の真ん中に立てて、その周りを新作を着たモデルが歩き回ったり、椅子に座ってポーズをとった。

3月19日には東京ファッション・ウイーク期間中にアマゾン ファッションによる支援プログラム「アット トウキョウ(AT TOKYO)」でショーを発表する予定だ。

「イケア」とヴァージルがコラボしたラグが再発売

「イケア(IKEA)」は6月1日、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)をはじめとする7組のクリエイターとコラボレーションした限定ラグコレクション“イケアアートイベント2019”を発売する。

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「イケア」は昨年12月にヴァージルとラグコレクションを発売し、先行販売会には約1万人が応募、正式ローンチでも即完売するなど大好評だった。今回は、ヴァージルがデザインしたラグのみ抽選販売を行う。申し込みは5月10日から20日まで公式サイトで受け付ける。同商品は、ペルシャ柄に“KEEP OFF”の文字がレイアウトされた前回一番人気のデザインで、縦200cm、横300cmと前回より大きいサイズとなる。価格は6万9990円(税込)で、「イケア」のメンバーシップクラブ「イケア ファミリー(IKEA FAMILY)」会員は5万9990円(同)。なお、今年11月に発売を控える両者の限定コレクション“マルケラッド(MARKERAD)”の中に今回販売されるラグは含まれない。

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ヴァージルは、「リビングを座ってくつろぐ場所というよりショールームみたいな場所にしてしまう、家具に対する昔気質の考え方を、アイロニックに取り上げてみました。親世代の“家具をだめにしないように”っていうあの発想は、今の若い人たちの家具に対する考え方に大きく影響していると思う」とコメントしている。

ヴァージル以外のクリエイターはアメリカ人デュオアーティストのチャオッザ(Chiaozza)、インスタレーション作品で国際的に活躍する日本人アーティストの河井美咲、韓国系フランス人アーティストのイ・スルギ(Seulgi Lee)、ブルックリンとスウェーデンを拠点に活動するアーティストのノア・ライオン(Noah Lyon)、ワルシャワを拠点に活動するグラフィックアーティストのフィリップ・パゴウスキー(Filip Pagowski)、折衷的アプローチをとるフランス人アーティストのスパキッチ(Supakitch)の6組。価格帯は3万9990円〜6万9990円(同)で、上記会員は1万円の値引きとなる。

「フェンディ」2019-20年秋冬ミラノ ボリュームと素材のコントラストで描く直線的グラフィカル

今季の「フェンディ(FENDI)」は、20世紀前半に活躍したスイス人女性アーティストのソフィー・トイバー・アルプの作品からインスピレーションを得た。丸や四角など単純な図形を用いて描く彼女の作風にちなみ、会場の壁面には巨大な円形の抽象画が並べられた。一方で、ランウエイでは、四角いアブストラクトなグラフィックをはじめ、レザーのパネリングやはめ込み細工のようなスムースなパッチワーク、並行に走る切り替えなどを多用し、直線的でグラフィカルなアイテムを提案した。
ファーストルックは、ややくすんだ白のヘアカーフで作るオーバーサイズコート。真っ白なスムースレザーで切り替えてラインを描いたり、襟を重ねたようなデザインを用いたりすることで、ワントーンのアイテムにアクセントを加えている。その後もメゾンコードのファーからウールやダウンまでさまざまな素材のアウターが登場するが、体を包み込むようなボリューミーなシルエットが今の気分だ。また、全体のスタイリングの軸になっているのは、“ミニ マキシ”というコンセプト。例えば、白シャツやコンパクトなタートルネックのニットには、ハイウエストのペンシルスカートや、パネリングがIラインを強調するレザーのスカートをコーディネート。逆に、ややフレアに広がるロング丈のトップスには、膝下をファーで飾った細身のコーデュロイパンツを合わせ、長短のコントラストを描いている。

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バッグとシューズも、ファー使いとグラフィカルなラインがポイントになっている。バッグには、“ピーカブー”のクラッチが登場したほか、昨シーズンから提案している“トレ バゲット”にも新たな2サイズをラインアップ。丸や四角の立体的なパーツで飾ったアイテムが印象的だ。シューズは全てのアイテムに氷の塊のような“アイスヒール”を採用。ショートブーツを中心にバリエーション豊富に打ち出した。

また、同ブランドはオートクチュール期間中の7月8日、ファーで構成するコレクション「オートフルール」のショーを行う予定だ。

スイス時計「オリス」 ジャパン社主導で80年代の隆盛をもう一度

「機械式時計のエントリーブランド」として、かつては日本でも高い周知度を誇ったスイスの時計「オリス(ORIS)」が、日本での事業を再構築している。足がかりとして、9月26日から10月1日までポップアップショップをゼロベース表参道にオープンした。同ブランドは1月に本国100%出資のオリスジャパン(東京、田中麻美子・社長)を設立し、輸入代理店のユーロパッションから国内事業を継承した。同社の田中社長は「ディスカウントショップに並んだり、ネットで並行輸入品が売られている現状がある。まずはこれを整理したい。さらに、伝えきれていなかったブランドの哲学も正しく伝える。ブランドのプレゼンスを構築したうえで、百貨店や専門店でコーナー展開したい」と述べた。ポップアップに合わせて来日したウルリッヒ・W・ヘルツォーク(Ulrich W. Herzog)=オリス グループ会長に、ジャパン社設立の狙いや日本でのビジネスビジョンを聞いた。

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本社直轄型の現地法人設立は日本が初?それとも世界的な戦略なのか?

ウルリッヒ・W・ヘルツォーク=オリス グループ会長(以下、ヘルツォーク会長):米国や中国などにも本国出資の現地法人を構えている。国や地域の特性、代理店との関係性などから判断しており、全てを直轄にしたいわけではない。ビジネスが成功している国や地域では、わざわざ方法を変える必要はない。

つまり日本のビジネスは成功していない?

厳しい質問だ。説明するには、少し時間をさかのぼる必要がある。クオーツショックを経験したスイス時計は80年代、疲弊していた。それでも当時、「オリス」は“その先”を見ていた。先鋭的なユーザーはもう一度、機械式時計に興味を持つことを予測したのだ。そこでポインターデイト(ダイヤル上に配された数字を専用の針で指し示し、日付を表す機能)を備えたモデルなどを大きく打ち出し、特にパリと東京でアピールした。その結果、日本をはじめ世界中で爆発的に売れ、「オリス」にとって日本は重要かつ大きなマーケットになった。

optimize.webp (1)それから40年。もう一度 、80年代の「オリス」のポジションを取り戻したい?

その通りだ。今のわれわれのビジネス規模からすると、今回のポップアップショップは思い切った決断だったが、日本にはそれくらいのポテンシャルがあると感じている。

ジャパン社設立もそのため?

代理店に預ける場合、彼らは「オリス」だけでなく他のブランドも見なくてはならない。しかし今の時代は、さまざまなものがダイレクトにつながっている。「オリス」も日本の市場やユーザーに直結する必要があった。

現在の日本の顧客層と中心価格帯は?

顧客層は50代以上で、中心価格帯は30万円前後だ。これを80年代のように、スタイリッシュな30~40代のビジネス層にしていきたい。広告戦略も新聞がメーンだったが、デジタルを使い多角的に行いたい。まずは周知回復。今回のようなポップアップショップやイベントが効果的だと考える。

具体的にどんなモデルを打ち出す?

アップデートしたポインターデイトをアピールしたい。「オリス」の象徴であるレッドローターを搭載したムーブメントの改良はもちろん、ダイヤルの色をピジョンブルーにして視認性をキープしたままファッショナブルにしている。風防もプレキシガラス(透明のアクリル)から、ドーム状の形状はそのままにサファイアクリスタルに変更している。もちろんモダンなモデルもリリースするが、ベゼルのデザインやダイヤルのフォントなどはアーカイブにインスパイアされているのが特徴だ。

「オリス」のアイデンティティーとは?

3つある。1つ目は、自動巻きを中心に全ての商品が機械式であること。もちろん100%スイス製だ。1985年に、まず日本流通分を全て機械式にした。その後、90年には全世界で実現した。2つ目は技術革新。3時位置のノンリニアパワーリザーブインジケーター(10日間分の動力残量を可視化する仕様)をはじめ、1年に1つの特許を取ることを目標にしている。3つ目はコングロマリットに属さない独立メゾンであること。これにより信念に基づいてアクションできる。

日本では高級時計が売れている。「オリス」は、この波にどう乗る?

いい時計を持ちたいというマインドは皆にあり、それに応えたい。高品質で適正価格の機械式時計を提供したい。

今回はポップアップだったが実店舗の出店計画は?

縁やタイミングにもよるが、まずは表参道エリアを中心とした東京に、次に大阪に作りたい。